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ランニング基礎知識

心拍トレーニング③ フルマラソンのレベルアップに繋がるポイント

市民ランナーにも身近になった「心拍トレーニング」。少し難しいですが、しっかり概念を理解してからトレーニングに臨む方が、効果も高まります。「心拍トレーニング」に関する基礎知識の最終回は、中・上級編! フルマラソンのレベルアップに繋がるポイントをそのメカニズムから詳しくお伝えします。
⇒第1回 心拍トレーニング① まずは自分の最大心拍数を知ろう
⇒第2回 心拍トレーニング② 心拍ゾーンを活用して練習しよう


①フルマラソンのペースを知る…最大心拍数の約85%以下で走ろう

個人差はありますが、フルマラソンでは、最大心拍数の85%以上の心拍数で走り続けてしまうと、後半の失速の確率がかなり高くなると考えられています。人間の身体は通常、運動強度が上がるに従い心拍数が増加していきますが、このときに体内では、運動を行うことにより筋肉の活動量が増加し、

1)生産・利用・消費エネルギーの増加
  (酸素消費量+脂質&糖消費量の増加)
2)血中乳酸濃度の増加


ということが起こっています。
つまり、ランニングのペースが上がる(運動強度が増加する)と、より多くのエネルギーが使われる状態になるということ。エネルギー切れにならずに運動を継続できるギリギリの運動強度が『最大心拍数の85%』と言われています。


②エネルギーの生産・利用・消費のメカニズムを知る…糖分と脂肪をうまく燃焼しよう

人間は酸素を消費しながら、脂質と糖の両方をエネルギー源として、エネルギーを産み出しますが、運動強度によってそのバランスが以下のように変化します。

 ・運動強度が低くなると… エネルギー源の脂質の比率が高くなる
 ・運動強度が高くなると… エネルギー源の糖質の比率が高くなる

一般的には人の身体には、糖分が2000kcalほど貯蓄されています(個人差あり)。また、1km走ると体重×1kcalが消費されるといわれています。

例)60kgのランナーであれば1km走ると60kcal

フルマラソン42kmでは60kcal×42=2520kcal消費


つまり、体内に保有する糖分だけではフルマラソンを走りきることはできません。
したがって、運動強度が上がりすぎないように(体内に保有する糖を使い切らないように)走るペースをうまく抑えて、脂質をエネルギー源としながら(脂肪燃焼ゾーンを外れることなく)フルマラソンを走りきる必要があります。
このメカニズムを理解すると、失速を防ぐことに繋がります。レース中に補給するジェルなどは、糖分補給に効果的です。


③パフォーマンスを決める3要素を理解する

■VO2MAX(最大酸素摂取量)

持久的運動のパフォーマンスを向上させるには、持久的運動を行っている時にどれだけ多くのエネルギーを産み出し続けられるかが問われます。その能力を判断する一つの目安として、「VO2MAX」という指標があります。
「VO2MAX」とは、「最大酸素摂取量」と訳され、1分間に体内に取り込むことのできる酸素の最大量(体重1kgあたり)を指します。この値が高い=体重1kgあたりで1分間に使える酸素量が多い=生み出せるエネルギー量が多い=より速く走れる、といえます。この指標で自分の今のフルマラソンの予測タイムも割り出すことができます。(最近のランニングウォッチでは、VO2MAX推定計測機能がついているものも増えています。)

■LT値と心拍数の関係

運動強度が上がり、エネルギー源として糖を利用する割合が高まると、糖を消費した結果として血中の乳酸が増加します。血中の乳酸濃度が2mmol/lという値を大きく超えると、長時間の運動の継続は困難となります。この2mmol/lの値がLT(乳酸性作業閾値)と呼ばれ、LTに達する運動強度のときの心拍数が、最大心拍数のおよそ85%とされています。
2mmol/lを超えた運動、すなわち最大心拍数の85%を超えた運動は長時間継続することができないので、①の「フルマラソンでは最大心拍数の約85%以下で走ろう」に繋がります。

■ランニングエコノミー

3要素の最後の一つがランニングエコノミー、すなわちエネルギーのコスト・効率です。
車の燃費と同じことですが、どれだけエンジンと排気量が大きくても、エコカーのように低燃費でエネルギー消費を抑えることができなければ、長時間遠くまで走ることはできません。実際に人間が走っている瞬間に、どれだけのエネルギーを使っているかは知ることができませんが、概念を知ることは有益です。
効率的なフォームで走ることは、ランニングエコノミー向上へ繋がります。ストライドが1cm伸びるだけでも効果があるでしょう。普段の「動き」を意識することで、ランニングエコノミーは変わってきます。




大切なことは、
 ・より多くの酸素摂取が出来る身体にすること
 ・脂質と糖をバランスよく使って走るときのランニングスピードを上げること
 ・効率的なフォームで走ること
です。これらを意識して、心拍トレーニングを楽しんで行い、最大心拍数の85%で走るスピード(フルマラソンレースペース)を上げることを目指しましょう。

(監修:東京国際大学駅伝部コーチ 松村拓希さん supported by EPSON WristableGPS


松村拓希(まつむら・ひろき) 東京国際大学駅伝部コーチ/エデュケーター。
駒沢大学時代は日本インカレ優勝、全日本大学駅伝区間新記録更新を経験。卒業後、日清食品で実業団ランナーとして活躍。世界クロカン日本代表として日の丸も背負う。
選手として現役を引退した後、筑波大学大学院で学び、現在は東京国際大学駅伝コーチとして指導を行う。競技者としてだけではなく、社会で活躍できる自立した人間となるような指導を行っている。
●主な成績 日本インカレ10000m 優勝(2002年)


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