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RUNNET TRAIL コラム

逆境が勝利へのモチベーション。走りの基礎をトレランで築く

半田 佑之介 さん
第5回
富士山麓トレイルラン(2008年)優勝

半田 佑之介 さん

気持ちの強さでは負けない!

「分かるのは、前を行く選手の疲労具合だけ。走り方、息遣い、表情などから、調子や状態の良し悪しが、何となく見えてくる。あとは、互いの疲労度合いによって仕掛け場所を判断するんです」
 平坦なロードレースよりも、起伏のあるトレイルレースのほうが、他のランナーとの駆け引きがあると語る半田さんだが、実は、トレイルレースに出場し始めるようになったのは、ついこの1年あまりのこと。経験が浅いのに勝利できる理由を問うと、走ることが心底好きで、つねにモチベーションが高いからだと即答。しかし現状は、その意欲に見合う練習はできていない。というのも、2004年に出場したロードのハーフレースでハムストリングスを傷め、故障が長引いているからだ。
「今でこそ多少回復の兆しは見られますが、2008年まではまったく思うように走れていませんでした」
 故障してからの数年来の練習メニューは、40~50分のジョグがメイン。ひとりで走る時は、なるべく平坦ではないロードを選び、キロ4分~4分30秒ペースで最低限の走力維持に努める。2008年9月に自らが立ち上げたランニングクラブのメンバーとともに走る時は、キロ7分~7分30秒のスロージョグ。ポイント練習は、唯一月曜の12kmペース走のみ。キロ3分10~20秒ペースで追い込むために、前日の日曜は完全休養にして準備する。そして、負荷をかけた脚を火~土曜のジョグで休める、の繰り返し。月間走行距離は300kmにも満たないという。土曜のうち、月に2回は近場の筑波山(標高877m)も走るが、トレイルツアーの案内役なので、ゆっくりペースで途中立ち止まることもしばしば。足腰の鍛錬には役立っているが、自身の本格練習とは遠い内容だ。

2008年富士山麓トレイルラン(18km)は1時間34分39秒で優勝

2008年富士山麓トレイルラン(18km)は1時間34分39秒で優勝

効率的な走りを大学院にて勉強中

 現状、トレイルレースに向けての特別な練習は一切していないし、リスクの高い下りはあまりスピードを出したくないと消極的。にもかかわらず、1度ならず 3度(2008年の富士山麓トレイルラン、高尾山天狗トレイル、陣馬山トレイルレース)も優勝できたのは、過去に鍛えた貯金があったからだと分析する。
「中学から大学まで陸上部に所属していました。多い時には月間1100kmも走っていましたし、育った福島の環境から、山を走ることにはもとから違和感がなかったんです。ハムストリングスを傷めて、衝撃の強いロードを走れなくなった翌年の2005年には、縦走競技に転向して国体に出場しました。重い荷物を背負って山を走る練習で大腿四頭筋が強化されたのも、トレランの上りに生かされているのかもしれませんね」
 2009年4月から、筑波大学大学院に在籍して体育学を専攻し始めた。これからは、「根性だけでなく脳を使った効率の良い走りを追求していきたい」と言う。故障中に始めたトレランで不整地を走ったことで、走りの基礎となる足腰が築かれたと確信する。2009年はぜひ、地元開催のつくばマラソンに出場して、その成果を証明したいと意欲を燃やす(2時間27分23秒で6位)。そして、トレイルを力強く駆ける姿を、1日も早く見せてほしい。

※『1冊まるごとトレイルランvol.4』(2009年5月22日)掲載のものをそのまま転載しています

2009年青梅高水山トレイルラン(30㎞)では2時間12分6秒で3位

2009年青梅高水山トレイルラン(30㎞)では2時間12分6秒で3位

半田 佑之介 さん

半田 佑之介(はんだ・ゆうのすけ)


1977年生まれ。2005年縦走競技で国体に出場。走ることをより深く学ぶため、2008年5月に消防職員を辞め、地元福島を離れて茨城・筑波へ転居。2008年9月に会員制ランニングクラブ「Tsukuba Strides Running Club」(http://hashiro.wordpress.com/)を設立する。2009年4月より筑波大学大学院に在籍し、体育学を専攻。将来はランニングをはじめとしたスポーツ普及に尽力するのが夢。
取材・文/秋葉桃子
写真/飯田照明、本誌編集部
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